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●中禅寺湖-ちゅうぜんじこ-ヒメマス物語

中禅寺湖の紅葉は、湖の中から染まってくるといわれる。水中の植物が赤くなるのではない。毎年紅葉の始まる直前、産卵のため遡上-そじょう-するヒメマスが、真っ赤な「婚姻色-こんいんしょく-」になって湖面に映るのだ。



婚姻色に染まったヒメマスの群れ


中禅寺湖のヒメマスの一生は、サケのように川に始まる。川を下って湖に出るのだ。ここで、おもしろい変化が起こる。まず体の色が変わり(銀毛化-ぎんげか-)、さらに海水にも耐えられる体になるのだ。環境が変わっても、祖先であるサケの性質を忘れていないのである。
 大海(湖)を回遊するのは3〜4年といわれている。そして「婚姻色」になって、川へと戻り始める。メスは産卵のための穴を掘り、オスはそのかたわらで、ときおり体をふるわせながら放精のタイミングを待つ。そして、無事に産卵を終えると死んでいく。赤くなるのは結婚のためであると同時に「死に装束」でもあるのだ。産卵の様子は、菖蒲ガ浜-しょうぶがはま-近くの清水という川で見ることができる。



ヒメマスの産卵の様子


サケやマスの本能には計り知れないものがある。10年ほど前には華厳ノ滝-けごんのたき-で、ヒメマスの集団飛び降り自殺が発見された。本能が働いて海まで下ろうとしたのだと考えられている。平成6(1994)年には、中禅寺湖の固有種であるホンマスが、体長50センチの巨大な姿に変わって下流の鬼怒川で発見された。華厳ノ滝を飛び降りても生き延び、海で回遊したあと、遡上してきたものと思われる。


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